社員研修を実施するに当たって、ごくまれに「とにかく厳しい研修をしてください」「スパルタ式でお願いします」などと依頼する企業があります。厳しいスパルタ式で社員研修を行うのは、果たして良いことなのでしょうか?結論を言うと、基本的には時代錯誤だと思います。
社員研修を厳しいスパルタ式で行うメリットとデメリット
社員研修を厳しいスパルタ式で行うメリットとデメリットについて、7項目に分けて詳しくご説明します。
厳しいスパルタ教育では、短期的な成果を得られやすい
メリットから考えてみます。メリット1は、短期的な成果を得られやすいことです。厳しいスパルタ式の社員研修では、社員をハードな環境に置いて、厳格な規律の下で、厳しい訓練を行います。無理やり追い込むことで、一時的には短期的な成果を得やすい可能性があります。
社員は、普段は出さないような大声を出したり、講師や参加メンバーから強い口調で叱責されたりすることで、自分自身の限界を超えて、高いパフォーマンスを発揮することを求められます。良否は別にして、このマインドが短期的な成果につながる可能性は高いです。
困難への対応力とストレス耐性が養われる
メリット2は、困難への対応力とストレス耐性が養われることです。厳しいスパルタ式の社員研修では、参加したメンバーにとって厳しい状況や課題に直面する機会が与えられます。無理やりでも、これに立ち向かうことで、困難への対応力とストレス耐性が養われます。
厳しい課題を何とかクリアしようとすることで、解決策をがむしゃらに考える必要があるからです。このようにして考え出した解決策の良否は別にして、実際のビジネス環境においても、いつ何が起きるかわからないので、このような体験は役立つ可能性があります。
他者に打ち勝つ競争心を育成できる
メリット3は、他者に打ち勝つ競争心を育成できることです。厳しいスパルタ式の社員研修においては、ある意味サバイバル競争であり、研修の参加メンバーには、他者を出し抜いて勝ち残ることが求められます。個人だけでなく、チーム単位で他チームと戦う研修もあります。
それゆえ、厳しいスパルタ式の社員研修を通じて、強い競争心を育成することができます。競争は成長へとつながることは確かです。競争が公平かつ適正なルールのもとに行われれば、競争を通じて、個々のメンバーの能力を高めることに繋がる可能性が高いです。
モチベーションの低下と離職する可能性が高まる
次はデメリットについて考えてみます。デメリット1は、モチベーションの低下と離職する可能性が高まることです。厳しいスパルタ式の社員研修は、社員に強いプレッシャーやストレスを与えるため、短期的な成果が得られたとしても、意識の高揚感は持続はしないのです。
継続的に厳しいスパルタ教育を実施すると、離職率の増加につながる可能性が著しく高くなります。社員はより働きやすい環境を求め、ストレスの少ない職場に移ることが予測されます。社員は、時代錯誤の社員研修を実施する企業に、わざわざ留まる必要性はないのです。
クリエイティビティと柔軟性が制約される
デメリット2はクリエイティビティと柔軟性が制約されることです。厳しいスパルタ教育では、問答無用の厳格な規律や一方的な訓練課題を強いるためです。個人の自由は封印されてしまいます。良いアイデアや創造性は、自由闊達な環境の中で生まれることを認識すべきです。
厳しいスパルタ式の社員研修は、社員の自由な発想を促したり、新たなアイデアを創出するには、まったく向いていない研修方法であると考えられます。この点が時代錯誤であると言わざるをえません。現代およびこれからの人材育成のニーズに反する研修方法です。
社員のメンタルヘルスに問題を生じさせる恐れがある
デメリット3は、社員のメンタルヘルスに問題を生じさせる恐れがあることです。繰り返しになりますが、厳しいスパルタ式の社員研修は、社員に過度なプレッシャーとストレスをもたらします。これが原因でメンタルに問題が生じるのです。これが最大のデメリットです。
社員研修において、企業が社員の健康と福祉に配慮することは、最優先条件です。厳しいスパルタ式の社員研修は、この意味で大きなリスクをはらんでいます。社員の人権侵害となる可能性があります。したがって、このような研修は旧態依然の研修ということができます。
コミュニケーションやコラボレーションの欠如につながる
デメリット4は、コミュニケーションやコラボレーションの欠如につながることです。厳しいスパルタ式の社員研修は、問答無用で指示命令が上位下達で行われることを基軸として実施されます。つまり、講師から出された指示には、無条件で従わなければならないやり方です。
コミュニケーションとは、お互いが相手を尊重して、対等に意見を述べられる環境でこそ、良好に意思疎通ができるものです。それゆえ、問答無用の縦関係を基軸としたスパルタ式の社員研修では、コミュニケーションやコラボレーションの欠如に繋がることになります。
社員のメンタルヘルスを損なった場合のデメリット
厳しいスパルタ式の社員研修を行って、社員のメンタルヘルスを損なった場合に、企業が受けるデメリットについてご説明します。
社員の離職率が増加する
不適切な研修が社員のメンタルヘルスに悪影響を与えると、社員は仕事に対するモチベーションを失い、ストレスや不安が蓄積される可能性が高まります。これが長期化すると、社員の離職率が増加し、企業は高い離職コストと生産性の低下に直面することになります。
労働力の品質と生産性が低下する
メンタルヘルスが損なわれた社員は、仕事に対する集中力や生産性が低下する可能性があります。これは企業の業績に直結し、競争力を低下させることがあります。健康で満足度の高い労働力は、企業の長期的な成功に寄与しますが、逆に悪影響を与えるとその逆が起こり得ます。
法的責任と訴訟のリスクが生じる
不適切な研修が直接的にまたは間接的に社員のメンタルヘルスに害を及ぼす場合、企業は法的な責任を問われる可能性があります。被害の度合いにより、社員やその家族が損害賠償を求めて訴訟を起こすことがあり、これに伴う法的なトラブルやコストが発生します。
社内の協力関係とチームワークが低下する
社員が心理的な負担を感じる状況が続くと、社内の協力関係やチームワークが低下する可能性があります。不適切な研修がチームメンバー間の信頼や相互理解を損なう場合、プロジェクトの進行や問題解決に支障が生じ、結果として企業の業績が悪化するリスクが高まります。
企業の信頼性と社会的責任が問われる
社員のメンタルヘルスに配慮しないと、企業の信頼性や社会的責任に対する評判に悪影響を与えます。企業は社会的な期待に応え、社員の健康と幸福を重視することが求められており、これを無視することでステークホルダーとの信頼関係が損なわれる可能性があります。
まとめ
今回は、社員研修において、厳しいスパルタ教育を導入したときのメリットとデメリットについて考えてみました。本文では、メリットを3つとデメリットを4つご説明しています。
結論を申し上げると、厳しいスパルタ教育による社員研修は、一見すると短期的な成果をあげやすいなどのメリットもありますが、それを上回るデメリットがある研修スタイルだと思います。
ダイバーシティなど個人の価値を尊重し、社員の健康と福祉を最優先とする現代の価値観とは、相いれない教育方針であると言わざるをえません。したがって、敢えて厳しいスパルタ式の社員研修を実施する必要性はないと考えます。
個人を尊重し、ワークショップを取り入れることにより、自由な発想を出し合って、クリエイティブな能力を発揮させる社員研修を選択するほうが、確実に長期的な成果につなる可能性が高いです。
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