コンプライアンス(法律遵守)が厳しく問われる時代となりました。ここでは、営業担当者として、一応は知っておかなければならない営業関連の法律を ごく簡単に概要のみご紹介します。営業社員は、必ず目を通しておいて下さい。
営業に関連する法律をご紹介
営業に関連する法律は多数ありますが、主要なものだけに絞ってご紹介します。
消費者契約法
営業関連法律1は、「消費者契約法」のご紹介です。営業活動のゴールは契約ですから、営業社員は契約に関する法律について、一通り学んでおくことが必要です。消費者契約法は、個人営業を行う上では極めて重要な法律です。
消費者契約法の概要
消費者契約法は2001年4月に施行された特別法で、消費者の利益保護を目的にした法律です。消費者が事業者等の不適切な勧誘方法によって結ばされた契約を、一定期間 取り消したり、一方的に不利な内容の契約条項を無効にできるというものです。
消費者契約法で無効となる契約条項
・事業者側の債務不履行時における消費者側に生じた損害の全部を免除する 条項
・事業者側の不法行為によって消費者の損害が生じた場合に、その損害の全部を免除する条項
・事業者が負うべき瑕疵担保責任を全部免除する条項
ただし、契約そのものが無効になるわけではないので、要注意です。
消費者契約法のワンポイント知識
消費者契約法には、「消費者団体訴訟制度」が認められています。これは、内閣府の認定を受けた適格消費者団体が、被害者である個人に代わって裁判所に差し止め請求を行うことができるというものです。
割賦販売法
営業関連法律2は、「割賦販売法」のご紹介です。割賦販売に関する法律ですから、高額商品を取り扱う営業社員には必須の法律です。
割賦販売法の概要
割賦販売法は割賦販売により発生するトラブルを未然に防止するためのさまざまな規制について定めた法律です。ここでいう割賦販売とは、商品、サービスなどの代金の一部を支払うことにより、残金は後日分割で支払うという形態の販売方法です。具体的に言うと代金を2ヵ月以上の期間にわたって、3回以上に分割して受領します。
割賦販売契約時の明示事項
・現金販売価格
・割賦販売価格
・割賦販売代金の支払期間および支払額
・支払回数
・割賦販売の手数料の料率
消費者は書面受領日から8日以内であれば、理由の如何を問わず、割賦販売契約を問わず割賦販売契約を解除することができます。これをクーリングオフといいます。これには、 諸条件があるので、実際には専門書で勉強して下さい。
割賦販売法のワンポイント知識
割賦販売契約が成立したら、事業者は遅滞なく必要事項が記載された書類を契約者に交付しなければなりません。ここで遅滞なくというのは3~4日以内、必要事項とは割賦販 売価格、賦払い金(各回の支払額)、割賦金の支払時期、割賦金の支払方法、商品の引渡時期、契約解除に関する事項、所有権の移転に関する定めがある場合はその内容、 事業者名、商品名、契約日などです。
特定商取引法
営業関連法律3は、「特定商取引法」のご紹介です。訪問販売や通信販売など無店舗販売の営業活動が対象ですので、無店舗販売をしている営業社員には必須の法律です。
特定商取引法の概要
特定商取引法は、訪問販売や通信販売など無店舗販売の商品やサービスについて消費者を悪質な業者や契約上のトラブルから保護するために一定の規制を課している法律です。
特定商取引の種類とクーリングオフ期間
・訪問販売(キャッチセールスなども含む):8日間
・電話勧誘販売(電話による商品販売):8日間
・特定継続的役務提供(教室・紹介サービス等):8日間
・連鎖販売(ネットワークサービス):20日間
・業務提供誘引販売(モニター商法):20日間
・通信販売(ネット販売含む):適用なし
・ネガティブオプション(送り付け):クーリングオフの必要なし
特定商取引法のワンポイント知識
特定商取引法は、インターネットでの営業にも適用されます。通常のインターネット通販だけでなく、インターネットオークションなども対象となります。内容は、広告の表示につ いて、誇大広告の禁止について、顧客の意に反して申込みをさせようとする行為の禁止 についてです。また、迷惑メールに関するルールも定められているので、注意を要します。
金融商品販売法
営業関連法律4は、「金融商品販売法」のご紹介です。金融商品販売は、誤解によりトラブルになることも多いので要注意です。銀行や証券会社など金融商品を取り扱う営業社員には、必須の法律です。
金融商品販売法の概要
金融商品販売法は、金融商品の販売業者との間で生じるトラブルから消費者を守るための法律です。対象となる金融商品は、預貯金、信託、保険、証券、ディバティブ商品投資、先物商品取引など、広範囲に指定されています。
金融商品販売法において販売業者に説明義務のある重要事項
・元本割れが発生する恐れがある旨およびその要因
・権利行使期限や解除できる期間の制限に関すること
また、金融商品の販売業者は、勧誘方針を策定して公表する義務を負っています。その主な内容は、勧誘の方法、勧誘の時間帯などです。
金融商品販売法のワンポイント知識
金融商品販売法では、説明義務のある重要事項に関して、説明義務違反によって消費者 に損害を与えた場合には、金融商品販売業者は、その損害を賠償する義務が生じます。
損害は一般に元金欠損分となります。取次や媒介、代理業者なども金融商品販売業者に含まれます。ただし、立証責任は消費者にあります。
独占禁止法
営業関連法律1は、「独占禁止法」のご紹介です。独占禁止法は、独り占めする企業を取り締まる法律のイメージが強いと思いますが、実際にはもっと幅広く様々な活動が規制されています。メーカーの営業管理者などには必須の法律です。
独占禁止法の概要
独占禁止法は、私的独占やカルテル、不公正な取引を制限して、公正かつ自由な競争を促進することを目的に制定された法律です。私的独占とは、特定の企業が競争相手を排除して圧倒的なシェアを獲得すること、カルテルとは複数の事業者が協定を結んで価格を決めたり、新規参入業者を事実上阻止したりすることを意味します。不公正な取引とは、劣位な取引先に無理な条件を押し付けることなどを意味します。
独占禁止法における不公平な取引事例
・不当廉売:商品を不当に安い価格で継続販売すること
・抱き合わせ販売:他の在庫と併せての購入を迫ること
・優越的地位の乱用:棚卸など作業を強制すること
・再販価格の拘束:販売価格を指示して拘束すること
独占禁止法には上記をはじめとして16種類の不公平な取引の類型が定められ
ています。詳しくは、専門書を調べて下さい。
独占禁止法のワンポイント知識
独占禁止法の運用・執行は公正取引委員会が行います。違反が認められると排除勧告が出されます。カルテルに対しては課徴金が課せられます。違反を知りながら是正しなかった場合には、懲役や罰金などの刑事罰が科せられます。他人に損害を与えた場合には、損害賠償責任が発生します。
製造物責任法
営業関連法律6は、「製造物責任法」のご紹介です。この法律は、通称PL法として広く知られています。メーカーの営業社員はもちろんのこと、輸入販売業の営業社員にとっても必須の法律です。
製造物責任法の概要
製造物責任法は、通称PL法とも呼ばれ、製品に欠陥があったことが原因で、消費者の生命や身体、財産に被害が及ぶような事故が発生した場合に、利用者が製造者に対して損害賠償を容易にできるようにした法律です。民法の特別法という位置づけにな ります。輸入品の場合は、輸入業者が対象になります。
製造物責任法における製品の欠陥は、次の3種類となります
・製造上の欠陥
・設計上の欠陥
・指示・警告上の欠陥
製造者に損害賠償請求を行う場合は、製品の欠陥と損害の間に因果関係があることが条件となります。
製造物責任法のワンポイント知識
最近の事例では、携帯電話をズボンのポケットに入れたまま、うたた寝をして、やけどをして訴えたケースがあります。地裁では製造物責任はなし、高裁では製造物責任はありと判定されました。このように、どこまで製造者が責任を負うかの判定は難しい問題です。
景品表示法
営業関連法律7は、「景品表示法」のご紹介です。一般に景表法と呼ばれることが多いです。消費者向けの商品を小売業者や卸売り業者に販売している営業社員には必須の法律です。
景品表示法の概要
景品表示法は、正式には不当景品類及び不当表示防止法といいます。独占禁止法を補完するもので、公正取引委員会の管轄の下、公正かつ自由な競争を維持するための法律です。具体的には商品やサービスを販売する際の広告やキャンペーン活動で、虚偽 または誇大な広告の表示などを禁じています。また、景品表示法では、懸賞などの価格に対する景品類が定めれらています。
景品表示法に定められた景品の限度額
・一般懸賞で取引価額5000円未満:景品類の最高額は取引価格の20倍、
景品類の総額の限度額は景品に係る売上予定額の2%
・一般懸賞で取引価額5000円以上:景品類の最高額は10万円、
景品類の総額の限度額は景品に係る売上予定額の2%
・共同懸賞:取引額に関わらず景品類の最高額は30万円、
景品類の総額の限度額は景品に係る売上予定額の3%
・総付景品で取引価額1000円未満:景品類の最高額は200円
・総付景品で取引価額1000円以上:景品類の最高額は取引価額の2/10
景品表示法のワンポイント知識
景品表示法に定められた景品の限度額についての定めは、あくまでも購入者のみを対象とする懸賞に関する規定です。これをクローズド懸賞といいます。対象が購入者かどう かを問わない場合には、金額に関する規定は適用されません。これをオープン懸賞とい います。
個人情報保護法
営業関連法律8は、「個人情報保護法」のご紹介です。この法律は、コンプライアンスの核となる重要な法律です。営業活動をしているほぼすべての営業社員に関連しますので、必ず学んでおきましょう。
個人情報保護法の概要
個人情報保護法とは、個人情報の保護を目的として、個人情報の画院年および個人情報を取り扱う事業者の義務を定めた法律です。ここでいう個人情報とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と定められています。
個人情報取扱業者が負うべき義務
・利用目的の特定と利用目的による制限
・データ内容の正確性の確保と安全管理措置
・第三者提供の制限
・個人情報への本人の関与
・苦情の処理
個人情報保護法のワンポイント知識
個人情報保護法の対象となる個人情報取扱業者は、個人情報データベースを事業のために使用している事業者です。以前は、 過去6ヵ月間、5000人以上の個人データを保有していることが条件だったのですが、2015年に5,000人未満の個人情報を保有する小規模事業者の除外規定は廃止されました。個人情報取扱業者は、法人と個人を問いません。
不正競争防止法
営業関連法律9は、「不正競争防止法」のご紹介です。ライバル企業への転職なども活発な時代となっています。営業社員は、企業秘密の取り扱いについては、慎重な上にも慎重にする必要があります。
不正競争防止法の概要
不正競争防止法とは、不正競争防止法とは、公正かつ自由な競争を維持する目的で定められた法律で、市場を混乱させたり、自由で適正な競争を破壊する不正競争を取り締まるものです。不正競争防止法の不法行為には、9つの類型があります。
不正競争防止法の類型
・商品、営業主体混同惹起行為
・著名法表示使用行為
・商品形態模擬行為
・営業秘密に関する不正行為
・技術的制限手段の無効化行為
・ドメイン名の不正取得、使用
・原産地等の誤認惹起行為
・営業誹謗行為
・代理人等による商標冒用行為
上記で「惹起行為」とは事件や問題を起こす行為という意味です。 「冒用行為」とは、当事者の知らないうちに名義・名称を不正に使う行為という意味です。
不正競争防止法のワンポイント知識
不正競争防止法における営業秘密とは、製品の製造方法、設計図、実験データ等の技術に関する情報、顧客情報等の営業に関する情報、取引条件、販売マニュアル等の取引に 関する情報などを言います。営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性の3つの要件を満たす場合に保護されます。また、営業秘密はトレードシークレットとも呼ばれます。
※上記でご説明した法律知識はあくまでも概要です。法律は改正されることがあるので、詳細は専門書でご確認ください。また、法的な措置を取るときは、弁護士にご相談ください。
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