社員研修の時間と費用はどれくらい必要なのか|社員研修ドットコム

社員研修の時間と費用はどれくらい必要なのかについてご説明します。これが絶対という基準はないのですが、厚生労働省のデータから見る実際の社員研修の時間と費用や、社員研修に熱心な企業の実例などを踏まえて、目安となる時間と費用について考えてみたいと思います。

社員研修の時間と費用はどれくらい必要なのか

社員研修に必要な時間

社員研修の時間と費用はどれくらい必要なのでしょうか?7つの項目に分けて、詳しくご説明したいと思います。

統計データに見る実際の社員研修の時間

厚生労働省が毎年実施している「能力開発基本調査」のデータを検証してみます。執筆時点の最新は、令和4年度調査であり、令和3年の実績数値となります。

なお、この統計では、社員研修をOFF-JTと自己啓発にわけて調査しています。ここでは、OFF-JTについてのみ考察します。

結論から申し上げますと、年間の平均延べ受講時間は、労働者全体では19.5時間であり、そのうち正社員は21.3時間、正社員以外は11.5時間となっています。

労働者全体でみると、「5時間未満」が24.1%、「5時間以上10時間未満」が27.0%と、10時間未満の者が全体の2分の1を占めていることがわかります。

正社員と正社員以外を比較すると、正社員では「5時間未満」が19.7%に対して、正社員以外は44.1%となっており、かなり格差があるという結果になっています。

統計データに見る実際の社員研修の費用

厚生労働省の「能力開発基本調査」のデータには、企業が社員研修に支出した費用についても述べられています。同じく、OFF-JTについてのみ考察します。

令和3年度調査 に お け る OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額(令和3年度に費用を支出した企業の平均額。)は、1万3千円となっています。近年、低下傾向にあるとのことです。

調査対象企業のうち46.3%がOFF-JTに対して支出をしています。OFF-JTに支出をしていない企業は49.6%です。自己啓発のみに支出をしている企業は4.0%となっています。

OFF-JTすなわち、集合型の社員研修を実施していない企業が、予想以上に多いことに衝撃を受けます。日本の企業の生産性が低いと言われますが、その大きな要因が社員研修を実施していないことにあることが、よくわかります。

自己啓発の時間と費用についても調べてみる

念のため、自己啓発の時間と費用についても調べてみましょう。厚生労働省が毎年実施している「能力開発基本調査」のデータでは、自己啓発を行った者の平均延べ自己啓発実施時間は、「労働者全体」では41.1時間です。

その内訳を見ると、「正社員」の42.9時間に対して、「正社員以外」は32.8時間と少なくなっています。また、自己啓発支援に支出した自己負担費用の労働者一人当たり平均額 は2万8600千円ですが、0円が38%おり、自己啓発意識の低さが顕著になっています。

(引用:厚生労働省 令和4年度「能力開発基本調査」

年間教育時間が一番の会社の研修時間

社員研修

「人事マネジメント」という雑誌に「年間教育時間が一番の会社」が紹介されています。引用してご紹介してみます。

「社内外で行う年間の教育訓練時間は,少ない社員でも最低170時間(月間15時間),多い社員では270時間(月間20時間)を費やしています。 1 日に置き換えれば,社員 1 人ひとりが毎日30分~ 1 時間の教育を受けていることになります。しかも一番教育が必要な入社 3ヵ月以内に行う新入社員教育はこの時間には含まれていません。」(引用:2012.11 人事マネジメント

ちなみに、上記の数値はOFF-JT(集合研修)のみで、OJTは含まれていないということです。厚生労働省の「能力開発基本調査」のデータとは大きくかけ離れていますね。

社員研修に熱心な会社は、相当な時間をかけて実施していることがわかります。企業によって、大きな格差があるのです。

新入社員研修にはどのくらいの時間が必要か

ここからは、社員研修ドットコムのこれまでの経験に基づき、実際の研修では、社員研修にどれくらいの時間をかけているのかを、具体的なテーマを取り上げて、考えてみたいと思います。まず、新入社員研修から始めます。

通常、新入社員研修は1週間から1ヵ月程度の期間で行われることが一般的です。大規模で社員数が多い企業や、特に技術面に特徴のある専門的な職種の場合、研修期間はそれ以上になることもあります。

会社の使命・ビジョン・価値観の説明、行動規範や倫理規定の解説、労働法や雇用規則の概要などから始めて、会社の製品やサービスの概要、各部署の業務プロセスの説明、チームワークの重要性と協力関係の築き方についての学習などに移っていきます。

階層別やテーマ別研修は毎月1回6ヵ月程度の研修が多い

次に、階層別研修やテーマ別研修について考えてみます。例えば、社員研修ドットコムで役員研修を実施する場合には、通常は毎月1回開催で6ヵ月間で実施しています。熱心な企業では、毎月1回開催で1年間実施する場合もあります。

例えば、6ヵ月コースだと、コンプライアンス、経営分析、経営戦略、マーケティング、組織論とコーチング、労務管理などのテーマを組み合わせて実施します。毎回、課題を与えて、次回にチェックすることで、成果を高めます。

管理者研修なども、各回のテーマは異なりますが、同様に、月1回6ヵ月程度の研修で、課題とチェックを繰り返します。

特定のテーマで単発で行う場合もありますが、効果が高いとはいえません。階層別や同じ職種の人材を集合させて、6回コースか12回コースで必要なテーマを組み合わせて実施するほうが、はるかに効果が高いです。

結局、研修時間と費用はどれくらいが必要か

企業規模や業種によっても異なるので、正解はないのですが、あくまでも目安ということでお話ししたいと思います。1人当たりのOFF-JT(集合研修)の研修時間は、少なくとも毎月6時間以上、年間で72時間以上は必要であると考えます。

費用については、1人当たりの費用は、少なくとも毎月2万円以上、年間で24万円以上は必要であると考えます。1回当たりの研修人数や研修内容のレベルによっても、1人当たりの費用は大きく左右されるので、あくまでも目安と考えてください。

社員研修が不十分なことで生じる企業のデメリット

社員研修の時間や費用が不十分だった場合に、企業にとってはどのようなデメリットが生じるのでしょうか?様々なデメリットが想定できますが、その中から主な5ポイントに絞ってご説明します。

企業の生産性が低下する

社員研修の時間や費用が不十分だと、社員は必要なスキルや知識が不足している可能性があります。これが続くと、業務効率が下がり、生産性が低下します。適切な研修が提供されないと、業務の遂行において不確実性や誤りが増え、作業プロセスが滞ることがあります。

社員のモチベーションが低下する

社員が必要なスキルや知識を身につける機会が提供されない場合、モチベーションは低下しやすくなります。適切なトレーニングがないと、社員は仕事に対する興味を失い、組織への忠誠心が低下する可能性があります。これが続くと、離職率が上昇する可能性があります。

企業の競争力が失われる

産業環境は急速に変化しており、新しい技術やトレンドが出現しています。適切な研修が提供されない場合、企業は市場での競争力を維持できなくなります。競合他社が迅速に変化に適応できる中で、技術的な遅れや不足があると、企業は市場での地位を失う可能性があります。

製品やサービスの品質が低下する

社員が製品やサービスの提供に必要なスキルを持っていない場合、製品やサービスの品質が低下する可能性があります。製品やサービスの品質の低下は顧客満足度の低下につながるため、企業の信頼性や企業イメージに悪影響を与える可能性があります。

企業にリスクが増大する

適切な研修が行われないと、社員が業務上の規制や法令に従わない可能性があります。これにより、法的な問題や規制違反のリスクが増加します。また、セキュリティに関する研修が不足すると、脆弱性が増大し、データの漏洩や機密情報の流失などのリスクが高まります。

まとめ

今回は、社員研修に必要な時間と費用について考えてみました。最初に、厚生労働省の「能力開発基本調査」のデータ、を調べてみましたが、あまりにも社員研修が実施されていない実態に驚愕しました。

これが、日本の企業は生産性が低く、日本の経済の衰退が長期に渡って続いていることの大きな要因となっていることは、疑いの余地もありません。社員研修を実施していない企業は、その姿勢を改めることが急務です。

一方、かなり熱心に社員研修に取り組んでいる企業も存在しており、企業間格差が大きく開いていく要因となっております。社員研修に熱心な企業は業績の良い企業に多いです。

業績の良い企業は資金にも余裕があるので、その資金を使って社員研修を行い、さらに業績が向上するという良循環を生み出しています。

それに対して、業績の悪い企業は研修費用を削減するため、社員のレベルやモチベーションが低下し、さらに業績が悪化するという悪循環に陥っています。その結果、両社の業績格差は益々大きくなっていくのです。

社員研修は、セールスプロモーションなどと比べると、直接的な効果が見えにくいため、つい後回しにしてしまう企業も多いかと思います。しかし、人材への投資は、長期的に見れば、最も業績アップに効果を発揮する投資であることを理解する必要があります。

今後の発展を目指す企業は、社員研修の時間と予算を確保して、人材育成に取り組んでいただきたいと思います。

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